木彫教室[第10回]-ルーター,トリマー,電動工具-

Old woman’s tooth

 ここからはルーターの説明に移ります。

 現代ではルーターと言えば、電動工具のことを指し、手道具のルーターなど見たことも無いという人が多いと思います。

 しかしかつてルーターと言えば、手道具のハンドルーターのことを指し、それは時折”Old woman’s tooth”と呼ばれることもありました。

 ”tooth”は単数形ですので、訳すとまさしく「おばあさんの一本の歯」ということになりますね。

 なぜ、そのように呼ばれるのかは、ルーターの写真を見れば、一目瞭然です。

Old woman’s tooh
Old woman’s toohの刃

 見てわかるとおり、一本の材に、直角に折れ曲がった刃を通しただけの簡単なツールです。

 ルーターは、ハンドルーターも電動ルーターも当初はバックグランドのレベリングを行うための道具として使用されていました。バックグランドのレベリングとはバックグランドのレベル(深さ)を合わせることを指します。

 レリーフカービングや文字彫刻(文字の浮き彫り)の背景を掘り下げる作業工程の事を指し、ハンドルーターは背景を全体にわたり、確実に同じ深さにすることができます。

 使い方は、刃が固定されている木製の棒部分を作品の峰になっているところの上に置き、その棒を前後にスライドさせることで、ブレードを前後に動かし、底(バックグランド)をさらうという、とてもシンプルな使い方です。しかし、応用範囲は広く、非常に便利なツールであることに間違いありません。

 ブレードは直角に曲がっており、和鑿の「ソコサライ」という道具と非常にています。

底サライ

 底サライはホゾ穴(凸状に整形した木と、凹状に整形した木を組み合わせて接合する木工テクニック)を掘ったとき、その底部を平らにするために使います。

 実際の使用例の動画がありましたので参照します。

 ルーターのブレードだけも市販されています。このブレードを買ってきて、ルーターを自作するわけです。

ルーターブレード

 このようにルーターは応用範囲が広く、使用する場面も、作る作品によってブレードを固定している木材部の長さも異なってくるので、ルーター自体を自作する場合は非常に多いです。

 直角に曲がったブレードさえあれば、自作はできるのですが、日本ではなかなか手に入らないからできない、と諦めることはありません。日本にも「底サライ」以外に、ちゃんと直角に曲がったブレードがあるのです。それも、手持ちのハンドツールを使って。

2丁カマケヒキ

 はい。木工をやる人なら対外持っている2丁カマケヒキです。外側のブレードは見ての通り直角に曲がっており、これを縦にすれば、そのままルーターとして使えそうですよね。これは、大きな発見です。一度は、使用をチャレンジする価値はあると思います。

 普通のバックグランドの作業は

  1. 必要な深さの近傍まで大型ガウジで木を削り落とす(ボスティングといいます)
  2. 次にルーターを深さを基準にして、すべてのレベルを整える。
  3. 平ノミとgrounders(bent chisel)で仕上げる

 という手順になります。

ハンドルーターの例
Old woman’s Toothを使用しているところ
バックグランドツールに依存しすぎないこと

 ツールを使用する上での注意は、とかく陥り易いのが、バックグランドツールに依存しすぎてしまうことです。ツールは補助的な意識で使い、最後はやはりハンドツールで仕上げるという気持ちは忘れないでください。

電動工具

 ポータブルマシンルーターは高速で回転するスピンドルとチャックの電動工具です。様々な形のカッター(ビット)を取り付けることができ、平らなめんの削り出しや貫通、モールディング、リベーティング(rebating)、溝加工などに使用することができます。

 電動ルーターは、主に、余分な木の除去や小さなモールディングという作業に、大変時間的節約をもたらします。ツールの特徴的な長所のひとつは、整形時の加工面が均一できれいに仕上がるというところにあります。

 たとえば、楕円形の鏡のフレームを加工するときなど、電動工具を全面にわたって使用することがあるでしょう。

 電動トリマーと電動ルーターは同じような回転型の電動工具です。現在では同じような作業に使うことができる上、両者の能力も向上し、昔はできなかったような加工も可能になっています。

 それだけツールとしての応用範囲は広がってきたのですが、ルーターとトリマーという言葉の「本来の」由来からできる作業の範囲の想像を巡らして欲しいと思っています。

 今までみてきたように、実は、両者は全く違った加工目的で由来で開発されたツールであるということです。ルーターは溝切り、トリマーは木材の角をトリム(取り除く・面取りする)することを目的としたツールでした。したがって、自分が目的とする加工をする前に、自分の作業がどの部類に入るのかを想像し、最適なツールを選定するようにしてください。無理な形状を無理なツールを選定して無理に行うということほど危険なことはありません。安全に、確実に作業を行うために、その辺には十分注意してください。

 なお、筆者はルーターはトリトン社製のルーターモデルを推奨しています。

トリトン製ルーターモデル

 プロ指向が強いモデルですが、ルーターテーブルに固定して使用する場合も、手持ちでルーティングの作業を行う場合も、関心するほどの安定度と使い回しを実現してくれます。

 スリーブは、ルータの軸を引き出すだけで簡単にロックされ、スパナで簡単にルータービットを交換することが可能です。

 また、スイッチの上にスライドするカバーがついており、意図せずに電源が入ってしまうという事故を防いでくれます。

 安全性と作業性という両面で優れたモデルであると思います。

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