木彫教室[第2回]-アーティスティック・スキルとは-

 前回、木彫に関しては、工芸的側面(クラフトマンシップ)と、芸術的側面(アーティスティック・スキル)が必要であるということを説明しました。

 今回は、芸術的側面について、もう少し詳しく掘り下げてみたいと思います。

リーフ
制作:2020年
井上和彦

 一般に、芸術的真価(能力)というものは、工芸的能力より”ゆっくり”開発されるものです。

 さて、今ここで”ゆっくり”という言葉を使いました。

 しかし、この言葉は能力開発の過程を、正しく表現していないかも知れません。

 私が申し上げたいのは、芸術的能力の開発には、長い時間がかかる、ということを単に表現したいわけではありません

 確かに実際、何年も技術的向上が見られないというケースも、あるかも知れません。

 ポイントは、むしろ、ある日覚めたときに、突然に能力が開花するような、そのような爆発的なホップアップを指しています。

 能力の開発は段階的に連続的に向上するイメージではなく、不連続的に急にホップアップするイメージで開花する、このようなプロセスを通ることが多いと思います。

 結論から言いますと、芸術的能力を高める方法は、本当はたったひとつしかありません。

 それは、現在あるいは過去の「良い仕事を見ること」です。

 それ以外の方法で、能力を向上させることはできません。

 その作品に生命と、優秀さをもたらしている”クオリティ”を理解しようと努力するということ。

 実のところ、そういう努力からしか、芸術的能力の向上を実現することはできないのです。

 前回、作りかけのカートゥーシェの例を出しました。

 是非、ここでこの作品のクオリティは(右半分と左半分を比べて)どこにあるか観察してみてください。

作りかけのカートゥーシェ

 世の中にはたくさんの見るべきカービング(彫刻)があります。

 それらは、博物館にあったり、教会にあったり、ビルディングにあったり、日常的に眺めている造形に含まれていたり、日常的に使っている身の回りの物に含まれていたりします。

 「クオリティ」を正しく理解しようという努力を開発するということ。

 これができるようになれば、彫刻に同じようなスタイルや精神を持ち込むことができるようになるまで、そんなに時間はかからないことでしょう。

 物事に対する正しい理解は、何かを自分自身でできるようになるまでもたらされない、というのは古い認識です。

 才能のある芸術家(あるいは、クラフトマン)が彼の仕事に込めた「スキル」を認識したときだけ、それらはもたらされるのです。

 本ブログで紹介する内容は、ビギナーや限られた経験しか有していない、ノービスのクラフトマンに役に立つ情報を提供する、という視点で統一しています。

 サンプルにはできるだけ写真や図を入れ、必要ならば寸法も入れて、コピーの経験が少ない人でもコピーできるようしてあります。

 しかし、できる限り自分自身のオリジナルの仕事に導入できるように、基礎的な部分のコピーだけにとどめるべきだということは強調しておきます。

 この章で強調したこと、仕事の「質(クオリティ)」がどこにあるのか、その視点を忘れないようにトレーニングをすることお勧めします。

木胸像 2014年(前回の写真)の制作過程の写真

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