0.はじめに
木工を初めようと考えたとき、そもそも、どういう道具が必要なのか?途方に暮れることと思います。
実は、多くの人のウッドワーキング(Wood Working)ライフはこんな、身近な問題から始まります。そうです、どんな腕のたつベテランでさえも、最初はそういう状態から始まるのです。
ところで、そもそも自分は何を作りたかったのでしょうか?
どんな物を作るにしても、今は本もあります。インターネットを調べれば動画だってあります。すぐに作り方はわかることでしょう。
しかし木工は、数学や科学のように、本や動画を見て、正解(作り方)がわかれば終了という類いのものではありません。
むしろ、本や動画で”正解(つくり方)”を見つけた時点から、自身が「真の理解」に到達するまで必要とする努力を始める、という種類のスキルです。要するに、そここそがスタート地点です。
さらに、もう一歩進んで、「真の理解」に到達できないノウハウ(作り方)、たとえば、どうやっても自分ではできないような作り方とか、は自分に取っては正解ではないわけですので、理解しようとする努力も意味のあるものではなくなります。
本やインターネットで理解した物事を、「真の自身の理解」に昇華させるプロセス、それこそが木工においては重要と言えるでしょう。
このプロセスをもっとも理解しやすい言葉で言うなら、たぶん一言で「手を動かす」という行為そのものになると思います。
頭で理解することは必要ですが、それだけでは物は“絶対”完成しませんし、自分が最初に作ろうと思ったものなど、いつまでたっても“絶対“に具現化されないのです。
さて、よくノービスの木工学習者から、木工を始めるにあたり、どういう道具を揃えれば良いかという質問を受けることがあります。
筆者は既述の背景から、手道具を使って何かができるようになる、という目標は、当面の目標として悪くない目標であると思いますので、まずは手道具を使えるようにすること、そしてその後は、使える手道具を増やしていくというアプローチをアドバイスしています。
本稿は、ノービスの木工学習者が、どういう種類の道具をエントリー時に揃えておくのが良いか?という観点でまとめた紹介記事になります。
1.ケヒキ

最初に紹介する手道具はケヒキです。写真はわかりにくいのですが、鍵状に曲がった金属製の刃が2丁あるタイプで、通称「2丁鎌ケヒキ」といいます。(金四郎作)
この手道具の持ち方は、木製の突出部を人指し指と中指の間に挟んで持ちます。木材の端に面を当てて、スライドさせてケガキ線を書く道具です。
2丁なので、一回のケガキで2つの線を書くことができます。5段のアラレ組などをケガク場合は、この2丁を同時に使うと、ケガキ時のミスをなくすことができる上、すばやく作業を行うことができます。この2丁鎌ケヒキを持っているなら、2丁をフルに使って5段のアラレ組を作る練習を是非やってみてください。
材に当てる面には「シダン」という南洋の豆科の堅い木が埋め込まれています。擦ったことによる摩耗には強いことになっています。
ケヒキは1台あれば事が済むという道具ではありません。熟練すればするほど、何台も持っている傾向があります。何台も持っていれば、一度セットした寸法を変えることなく、別のケヒキに持ち変えることで、すばやく作業を継続することができるからです。このすばやく持ち替えて作業を継続できるという点を、メリットとして感じることができるようになるというのも、上達してきた証になります。